牛を引き取りにゆく

農園日記

2019.10.11
8時に農場集合。動物の餌やりから始める。
いつもより朝早いのは、今日は牛を引き取りに他の農場に行くからだ。

コーヒー休憩の後、エドの車にトレーラーをつけて出発。トランクには愛犬モスが座っている。
いつもは、もう1匹、モスの母ホリーもいるのだが今日はお留守番。というのも我々が着いた日にトランクでスーツケースが倒れ掛かってケガしてしまったのだ。徐々に回復してはいたが、老齢だし心配である。
1時間半ほどの道中は雨だった、しかも結構激しい。
今日は学校で昼食が食べれないので、途中サービスエリアに立ち寄って、ファーストフード店でビーガン向けのパイを買ってもらって食べた。肉が入っていなくても十分うまい。エドはビーガンではないが、こういう店の肉は食べないようにしている、と言っていた。

昼過ぎに目的の農場についた。ピーク地方(Peak District)と聞いていたが、あとで調べると風光明媚な観光地でもあるらしい。確かに天気は優れなかったが、緑の美しいエリアである。
ここの農場主はまだ若い、スラっとした女性で、エドが昔売った牛を引き取って欲しいということだった。エンジニアとして資金を貯め、念願の農場を手に入れたのだが、パートナーと別れてしまい手が回らなくなってしまったらしい。こういう農場を一人で回すのは並大抵の労ではない。
牛は、4頭いた。内2頭は子ども。
ちなみに英語で仔牛は”calf”という。家畜の名詞が数多くあって大変だ。

4人がかりで、まず母牛を、つぎに仔牛をトレーラーに押し込んだ。
別れの時、その持ち主の女性は、泣いていた。僕は牛を引き取ることに気が入っていて彼女がどういう気持ちなのか察してなかったので、一瞬驚いたが、すぐ「そりゃそうだ」と思った。
牛たちはよく太っていた。夢を抱いて買い、愛情を持って世話してきたのだろう。それを不本意で手放さないとならないのだから。
エドも、「いつもより無愛想と思ったんだが、いろんな感情を押し殺していたんだろう」と同情していた。

牛たちを曳いた帰りの車は重そうだった。動物を運ぶという緊張感はすごい。助手席に座っているだけなのに身体に力が入ってしまう。信号待ちで止まれば車が揺れる。救急車が近くを通れば啼く。トレーラーの側面からはフンが垂れ出していた。そして動物にとっても輸送は最もストレスを感じることらしい。

金曜夕方のラッシュを抜けてどうにか学校にたどり着いた。
放牧地でトレーラーの後扉を開けると、牛たちがよろめきながら出てきた。そして他の牛たちの群れに無事に合流した。羊の時と同じく皆嬉しそうに動き出す。ちょうど束の間の太陽が雨の一日の締めくくりに顔を出した。素晴らしい光景だった。「この景色を見れただけで来た甲斐があったね」と彼女が言った。

その後、ヤギを小屋にしまい、温室の葉野菜に水をやってから帰宅した。
特に体を使った訳でもないが、二人とも極度に疲労していた。
そういえばエドも最後の方は疲れで体が傾いていた。

車でも動物を運ぶのは重労働だということがわかった一日。
ではまた。

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