コンポスト(堆肥)作り

農園日記

2019.10.18
今日は近くのVale Headファームから一人のファーマーが応援に来てくれた。
彼は一目ファーマーだった。朝バイクに乗ってやってきた彼は園芸ブーツに、裾が破れたビニールパンツを穿いていて、朴訥としてファッショナブルじゃない感じに親近感が湧いた。

さて今日は一日中、彼とコンポスト作りをした。
コンポスト。
僕にとっては当たり前の言葉になってしまっているけど、日本語で言えば堆肥のこと。生ゴミも意味する。堆肥とは要は畑の肥料である。良い畑を作る土台だ。
この学校では、食品廃棄物を集めて堆肥を作っている。人力の生ゴミ処理機があって、投入口に生ゴミを入れてハンドルを回せば、数日後に反対側から発酵した堆肥がでてくる。この段階では、まだキムチに似た発酵臭がして完全な堆肥にはなっていないが、すくなくとも土っぽくはなっている。さらにこれを畑の一角に積み重ねて、時間をかけて堆肥にしてゆく。

これとは別に落ち葉や畑の不要物、雑草が長年無造作に積み重ねられて汚くなっていたので、今日これから新たなコンポストを作り出した。
まず、この辺りを覆っているイラクサ(nettle)という草を取り除いた。イラクサはギ酸があって、触ると肌がかぶれる。初めてだとびっくりするぐらい痛い。でも農業には実は有用な植物で以前訪れたイタリアの農家では、イラクサを使って天然の農薬を作っていた。
そして、この山を掘り起し(土に還っていないジャガイモがたくさん出てきた)、別の場所に新たな山を作る。この時に干し草とウッドチップを混ぜた。

コンポスト作りで重要なのが、
1、有機物の配合
2、水
3、空気
の三つだ。

まず、配合。炭素Cと窒素Nがキーワードとなる。どちらも生き物の根幹を作るものだ。
炭素は、物の構造体である。ゴミが土に還るというのはこの構造体がバラバラになること。
植物は光合成で空気中の二酸化炭素からこれを作れる。
窒素は、分子として空気の8割を占める。原子として動植物のタンパク質に必須だが、実は植物は空気からはこれを取り込めないのだ。根っこから少し別の形で取り込んでいる。
このため農業では、この窒素の循環を作り出すことが重要である。
つまりコンポストの役割は、ゴミの中の窒素を分解して、植物が根から取り込める形の窒素にするということ。
そしてコンポストの中の、この炭素と窒素の比率が良くないと、微生物がうまく分解できないのだ。

水と空気は、生ゴミを分解してくれる微生物が生きるのに不可欠。
コンポストの温度が上がって乾いたら水をあげないといけないし、空気の通り道の確保も大切だ。

長くなったが、こういう訳で炭素と窒素の量を調節するために、色々混ぜる。
木陰にあればカラカラに乾くことはない。
立方体に作れば空気と触れ合う面積が多くなる。

こうやって少し科学的に考えれば、なぜこうやるかという理解が深まるし、おもしろいな。
コンポスト作りは奥が深い。
そして調和がとれた畑には必ず、端正で臭いもしない良いコンポストの山がある。その畑をやっている人の自然に対する意識が表れるのだろう。
コンポスト作りは汚いと嫌う人もいるかもしれないが、やってみると結構気持ち良くて好きな作業なのだ。僕は。
今日作ったものが使えるのは1年後くらいだろう。良いコンポストになるかな?結果はすぐには出ない。

さて今日一緒に働いたファーマーは経験豊富で働きながら色々教えてもらった。そして彼が言った言葉で印象的だったのを一つ。
「こういう学校でコンポストを作るのは象徴的な意味でも大事だと思う。社会から不適合とか能力がないとかみなされることが多い人たちが住んでいるだろう。コンポストも食べ物の余りやゴミだ。でもそれが新たな命を育む土壌に生まれ変わり、我々の命をも支えるわけだからね」

午後はエドが隣の畑に種まきをしていた。
小麦、大麦、ライ麦を少しずつ。実りとしては少ないだろうがいわば教材だ。
日本人が米を大事にするように、稲の実りに豊かな気持ちになるように、こっちの人は麦を大切に思い、その実りに豊かな気持ちになるに違いない。
そういえば僕も小学校でバケツで稲を育てたっけ。

麦まきのことわざ。
「麦は教会の鐘が聞こえるくらい浅くまけ」

今日は体力仕事ばかりだったので疲れた。
そして実は、今日は誕生日だったのでビールを飲んだ。イギリスで迎えた27歳。
夕食は、ホウレンソウパスタ。
明日彼女がまた改めてディナーを作ってくれるみたい。
さあ休みだ休みだ。

ではまた。

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