雄ヤギを貸しに行く

農園日記

2019.10.17 
朝ごはんは昨夜のスープの残りを雑炊にした。健康な鶏の産みたての卵を使うので美味しい。

午前中は収穫だ。温室内のトマトの収穫。
もう夏が終わり、根っこは抜いている。茎は紐に吊られて空中でまだ青い果実が熟れるのを待っていた。でももう寒くなってきたので今日で青トマトも含め全て収穫しきってしまう。
青トマトはキッチンのおばちゃんがチャツネにすると言っていた。
チャツネはインドがルーツの調味料で、ヨーロッパでは香辛料を効かせたジャムみたいなものを指す。イギリスではまだ食べたことがないので試してみたい。
さらにとっておきの調理法を教えてもらったので夜に作ってみた。

さて今日は、雄ヤギを繁殖のために別の農場に貸す。
僕が働いている学校の近くにある同じラスキンミルの農場Vale Head Farm。15ヘクタール、東京ドーム3個分の面積だ。農業をしていると面積がよく話題になるが、僕にはまだいまいちピンと来ない。イギリスではヤード・ポンド法の面積単位のエーカー(ac)があってさらにややこしい。
ここは大きな農場なので、近くのいくつかのラスキンミル学校農園のバックアップという役割もある。学校で採れない野菜を届けたり、動物を出し入れしたりする。勿論ここで研修する生徒もいる。
学校で動物を飼うのは大変だ。特に敷地の広さと頭数が合ってないと動物も、世話する人間側もストレスがたまる。そして季節による繁殖を考えると頭数管理は大変。そういう時に近くにハブ農場があると、連れて行ったり、連れ戻したりして調整ができるのでとても心強い。

連れてゆく雄ヤギはダニーという。ちょっと変わったヤギでなんという種類かわからなかったが、今調べたところボア種(Boer)みたい。頭が茶色で耳が長く、ムチムチ太い体をしている。鳴き声は人間の男が叫んだような太い声。人に構われるのが好きで、目を見ると感情がある犬のように感じられる。

もう何回目か、日産の4WDにトレーラーをつけて雄ヤギを連れてゆく。こっちの人がでかい車に乗るのは本当にパワーが必要だから。それでも時に草地でスタックすることも。
ファームに着き、ダニーを雌ヤギたちの柵の放すとすぐにオスになってアプローチをかけ始めた。口を高速でパクパクさせながらメスを追いかけてゆく様は気持ち悪いが、本能だから仕方ない。こうやってどんどんちょっと変わった種類のヤギが増えていくのである。

その間に、ファームを見学させてもらう。食堂では、ちょうど蜂蜜をしぼっているところだったので味見させてもらった。僕にとって初めて、巣からとった状態の蜂蜜を食べた。ミツロウの味がする。口の中にもにもロウが残った。でも養蜂いいなぁ。
エドも、養蜂はやりたいみたいだった。
建物の2階には織物の工房があった。窓からは丘が見渡せる気持ちの良い場所。テキスタイル好きの彼女が興奮していた。
外には果樹園や野菜畑、木工工房がある。
ここの風景はどこかしらフランスのイメージと重なった。見渡す限り草原が続くこと、あと砂地でイギリスの濃い緑が少し薄まるのかもしれない。

今日はダニーはおいて帰るのだが、他に何匹かの若いヤギを連れて帰った。
ここでちょっと印象的なことが。
若ヤギたちがトレーラーに入れられている時、 この農場の女の子(7、8才くらいかな)が、
「なんでこの子たちは屠殺されるの?」と訊いてきたのだ。
そして、我々の学校に移すだけと聞いてホッとしていた。
今回は違うが、その子の日常に屠殺があること、そんな言葉を知っていること自体にドキッとしてしまった。
農場で子ども時代を過ごすってどんな感じなんだろうか。僕より深く理解していることも色々あるんだろうな。
その後色々自分のお気に入りのヤギを教えてくれた。

さてヤギたちを連れて帰ると、まず外でこちらの群れに合流させる。
ヒエラルキーの強いヤギは、上下関係をはっきりさせようと結構熾烈にケンカする。だから広い外にしばらく放しておくのだ。角があるんだから危ない。

新たな上下関係のできたヤギを小屋に入れ今日はお終い。
夕飯はレンズマメのスープと青トマトフライ。
これを教えてもらっていたのだ。青トマトの活用法。
たいしたことはなく、スライスした青トマトに塩、ハーブ、小麦粉をして油をしたフライパンで焼くだけ。
パンにチーズと挟んで食べたらハンバーガーのような気がして結構おいしかった。
ピクニックとかにも良いかもとか話していたが、そもそも青トマトが手に入ることってそうないな。
家庭菜園している人とかにはいいかも。
とにかく貧乏性だからこういうことが楽しいのだ。

ではまた。

コメント

  1. こなもん より:

    文章が上手です。
    自分の思いを的確に表現していますね。

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